目次
序章 人間の本性を探る
第1章 進化心理学について
第2章 男と女はなぜこんなに違うのか
第3章 進化がバービー人形をデザインした ーセックスと配偶者選びについて
第4章 病めるときも貧しきときも? ー結婚について
第5章 親と子、厄介だがかけがえのない絆 ー家族の進化心理学
第6章 男を突き動かす悪魔的な衝動 ー犯罪と暴力について
第7章 世の中は公正ではなく、政治的に正しくもない ー政治と経済と社会について
第8章 善きもの悪しきもの、醜悪なるもの ー宗教と紛争について
第9章 おわりに ーいくつかの難問
気付き
(1)女性の美しさは健康の証
男たちは潜在的な配偶相手の健康を何で判断するのか。健康の信頼できる指標の一つは肉体的な魅力だ。もう一つは髪である。髪は1年で15センチくらいずつ伸びるということは、背中まで垂れた髪は、60センチくらいあり、過去4年間の健康状態があらわれることになる。平均的な顔も魅力的な条件になる。平均的な顔は、多様な遺伝子を受け継ぐことで形成されたことを意味し、より多くの種類の寄生虫に抵抗力を持ち、病因性の対立遺伝子を二つ持っている可能性が少ない。
(2)一夫一妻と一夫多妻
動物は一夫多妻であればあるほど、体の大きさの性差が大きい。人間は、身長が雄が雌の1.1倍、体重は1.2倍であり、ゴリラほどではないがマイルドな一夫多妻だった。資源格差が小さい社会では、富める男と貧しい男の所得にさほど大きな開きが無い社会では、金持ち男の資源の半分は貧乏男の資源全部より少ないため、女たちとしては金持ち男の資源を分け合うよりも、貧乏男の資源を独占する方がいい。一夫多妻制のもとでは、男同士の競争が激化するため、若い男が暴力的になる確率が高くなる。イスラム社会が自爆テロ犯を生み出す一つの要因が一夫多妻制である。
(3)犯罪も才能の発揮もライバルに勝とうとする欲求のあらわれ
どんな時代のどんな社会でも、階層、人種、性別にかかわりなく、犯罪や危険行為に走る確率は思春期の前半に上昇しはじめ、思春期の後半から成人初期にかけてピークに達し、20代から30代にかけて急減し、中年で一定になる。科学や芸術の生産性も男性に限り同様のピークが見られる。若い男を暴力や盗みや創造活動に駆り立てていた衝動は、子供ができたとたんに薄れて、なんとなく落ち着きたくなる。それは、競争のコストが上昇するからだと説明できる。
感想
進化心理学という分野の入門書です。とても面白く読むことができました。人間の本性が、進化の淘汰圧の観点で説明されることで、世界の見え方が全く変わります。